搬送自動化コラムvol.3

AMRは決して高い買い物ではない?!
AGVとの本体価格での単純比較には落とし穴が・・・

本体価格だけではわからないAMRの費用

AMRを導入する場合に、悩みどころのひとつは導入費用が何年で回収できるかではないでしょうか。

ただ導入費用の総額は、導入がはじめての場合では、なかなか想像することが難しいところがあります。そのため、まずはわかりやすい本体価格の比較から始めるのが大抵の導入担当者の常ではないでしょうか。ただ導入にかかる費用は本体価格だけではありません。

当社への問い合わせの際にも、「本体価格を教えてください」とお尋ねになる方が一定数お見えになりますが、家電製品とは違い、そもそも本体だけでは動かすこともできません。工場に導入し安定稼働させるためにはさまざまな付帯費用が必要となってきます。当然、本体の金額だけを比較するのであれば、AMRよりAGVの価格の方が安いのは間違いありませんが、実はここに落とし穴があることをはじめにご承知ください。

AGVは導入と維持管理にかかるコストが高いケースが多い

すでに現場でAGVを使用しているのであれば、定期メンテナンスやルート変更工事などのランニングコストの高さにデメリットを実感されているかもしれません。先に申し上げた通り、本体価格だけならAGVの方が安いのですが、AGVの現場への導入や運用においては下記の費用が必要になります。

AGVの初期投資
  • ・搬送ロボット本体
  • ・自動走行環境の構築費用
  • ・初期導入研修のコスト
AGVのランニングコスト
  • ・ガイドテープやマークなどの定期メンテナンス費
  • ・ルート変更や行先追加などの追加工事費

AGVの場合、決められたルートを走行させるため床に磁気テープを貼る必要があります。この磁気テープは自社内で貼って対応できることもありますが、多くの場合は走行環境を整えるために外部の工事業者に施工してもらうことがほとんどです。しかも、貼る前のシミュレーションを完璧に行うことは難しく、実際に稼働し始めてからさまざまな問題に気づくことになります。一度貼ってしまったガイドテープは、簡単には修正できません。また磁気テープを貼るために設備のレイアウトを変更する必要が生じることもあり、そうなると設備改善費がさらに膨らむことになります。

加えて多品種少量生産を求められる生産現場では、工程の切り替えや設定変更が頻繁に必要となるため、決められたルートを走行するAGVは選択肢のひとつにも入れることが難しいと思います。もし対応するのであれば、あらためてガイドテープをひき直す必要がありますが、その対応はほぼ不可能と言っても過言ではありません。

運用、将来の環境変化への対応まで含めて、
トータルコストで見た場合のAMRの優位性

一方でAMRの初期投資とランニングコストは以下のようになります。

AMRの初期投資
  • ・本体
  • ・搬送物に合わせたトップモジュール
  • ・運行管理ソフトウェア(必須の製品もオプションの製品もありメーカーによりさまざま)
  • ・初期導入研修費用
  • ・自動倉庫やエレベータといった外部設備や上位システムと連携する場合、そのために必要な機器や制御盤、プログラムの構築費用
ランニングコスト
  • ・ソフトウェア更新費用
  • ・タイヤなどの消耗品のメンテナンス費用

たとえば周辺設備や上位システムと複雑な連携をしない場合、AMRであれば、自社社員で設定変更自体は可能であるため、外注コストの削減につながります。また事前テストを行うことにより、実際に使用しながら最適な運用を調整していける点もAMRのメリットです。もちろん、AMRの特性が活かせる多品種少量生産の現場においては、強い味方と言えるのではないでしょうか。

このように、AGVかAMRか、二者択一の選択ではなく、現場の課題や製造のスタイルに応じた最適な導入と運用を総合的に勘案していく必要があるのです。

まとめ

少子高齢化や事業承継者不在などの事情で、労働力不足に悩む製造業は多く、慢性的な人手不足を解決する一手としてロボットの活用は有効だということはほとんどの企業で周知のことと思います。

その上でネックとなるのは費用ということですが、そもそも費用という観点からは上記で紹介した導入・運用費用以外にも、例えば採用に係る費用、さらには人が重労働に携わることで生じるリスクも費用に置き換えれば相当のものがあるはずです。

いずれにせよAGVやAMRを導入する際の投資金額は少額ではありません。機種選定だけでなく、課題解決の視点で運用後の生産体制を含めた長期的な視座で検討を進めることが肝要です。

当社では、搬送自動化の専門家として、製造工程へのAMRシステム導入を始め、現場の課題に合わせたサポートが可能です。ぜひお気軽にお問合せください。