安全に関する国内法令

日本国内で安全に関する代表的な法令には、「労働安全衛生法」、「労働安全衛生規則」、「機械の包括的な安全に関する指針」などがあります。
これら法令の関係性と強制力を下図に示します。

法令には法律、政令、省令などがあり、そのほかに各省が発行する通知や通達がありますが、リスクアセスメントと保護方策実施を求めた法律は、「労働安全衛生法」です。この法律は、第一条に明記されているように、事業者に対して労働者の安全と健康を確保するために定められたものであり、労働災害防止のために順守しなければならない事項が規定されています。また、法律の施行に伴う具体的な事項については、政令や省令または通知や通達等で示されます。特に、リスクアセスメントや機械安全化に関して規定したものは、省令では「労働安全衛生規則」、指針では「機械の包括的な安全に関する指針」になります。

労働安全衛生法

労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする法律です。機械安全に関わる内容として、機械や危険物、有害物に関する規制、労働者に対する安全衛生教育などについて定められています。この法律は、職場における労働災害発生のリスクを事前に摘み取るため、2006年に改正され、以下に示されるように事業者は「危険性・有害性等の調査及び必要な措置の実施」が必要となりました。

労働安全衛生法(第28条の2)

第四章 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置
(事業者の行うべき調査等)
第二十八条の二 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等(第五十七条第一項の政令で定める物及び第五十七条の二第一項に規定する通知対象物による危険性又は有害性等を除く。)を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。(以下略 化学物質のリスクアセスメントは別項で規定されています)
2 厚生労働大臣は、前条第一項及び第三項に定めるもののほか、前項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
3 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援助等を行うことができる。

また、上記に記載のある危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)は、以下に示されるように、労働安全衛生規則 第24条の11の中でいつ、どのように行うかが記載されています。

労働安全衛生規則

労働安全衛生規則 第24条の11
第二十四条の十一 法 第二十八条の二 第一項 の危険性又は有害性等の調査は、次に掲げる時期に行うものとする
一 建設物を設置し、移転し、変更し、又は解体するとき
二 設備、原材料等を新規に採用し、又は変更するとき
三 作業方法又は作業手順を新規に採用し、又は変更するとき
四 前三号に掲げるもののほか、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき
また、労働安全衛生法においては、「安全衛生管理体制の強化」も求められています。対象は、総括安全衛生管理者、安全委員会、衛生委員会などの選任、または設置義務がある事業場です。以下に示されるように、労働安全衛生規則 第21条~23条では、対象となる事業所については安全(衛生)委員会を設け、議事を記録に残すかが記載されています。

労働安全衛生規則 第21条~23条
1 安全・衛生に関する方針の表明に関すること
2 危険性、有害性の調査およびその結果に基づき講ずる処置に関すること
3 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価、および改善に関すること
4 事業者は、安全衛生委員会の開催の都度、遅滞なく、その議事の概略を労働者に周知すること

つまり、リスクアセスメントおよびリスク低減措置、安全衛生に関するP・D・C・Aのうち重要な内容は、議事に残し、従業員が内容を閲覧できるようにしておく必要があります。

労働安全衛生規則では「第二編 安全基準 第一章 機械による危険の防止」では、機械装置の具体体な構造や運用に関する規定があるので、関係する機械装置を使用する際には必ずチェックしてください。
例えば、その章には産業用ロボットに関する以下の条項があります。

第九節 産業用ロボット
(運転中の危険の防止)
第百五十条の四 事業者は、産業用ロボットを運転する場合(教示等のために産業用ロボットを運転する場合及び産業用ロボットの運転中に次条に規定する作業を行わなければならない場合において産業用ロボットを運転するときを除く。)において、当該産業用ロボットに接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、さく又は囲いを設ける等当該危険を防止するために必要な措置を講じなければならない。

この項にあるように運転中に産業用ロボットと接触する可能性があれば防護柵などが必須となります。
このほかに教示作業や点検作業時の運用についての規定があります。

危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成18年3月10日 公示第1号)
この指針は、労働安全衛生法 第28条の2により、事業者が使用する機械設備に対するリスクアセスメント(リスク低減措置を含む)の要求を、具体的に示した指針です。概ね、以下の内容が示されています。

1.「危険性又は有害性などの調査」とは何か
危険性または有害性などの調査とは、リスクアセスメントを意味し、労働者の就業に係る危険性、または有害性(ハザードまたは危険源)を災害が発生する前に見つけ出し、組織的に対策を検討する一連の流れです。事業者はリスクアセスメントの結果に基づいて、リスク低減措置を実施しなければなりません。