リスクアセスメントとは
「安全」の状態を保つためには、何をすればいいのでしょうか。
安全対策には、リスクを管理する体制(リスクマネジメント)づくり、そしてその中で機械設備や作業の持つリスクを評価し、その結果に従って対策を実施する「リスクアセスメント」と「リスク低減方策(保護方策)」を行うことが求められています。
リスクアセスメントとは、「危険性・有害性を調査すること」、つまり、業務上の危険性などを特定・評価し、その対策を検討・実施することとして日本の労働安全衛生法(二十八条の二)ではリスクアセスメントの実施が努力義務として定められています。特に現代においては多様な設備、物質が使用されており、それに応じて危険性・有害性も多様化していますので、何がリスクとなるのか、その見極めと優先度の選定、そして対策を行うことが大切となってきます。
1. 機械類の制限の決定
機械の使用上の範囲の決定、設置環境の限定、時間的限定など仕様を決定します。
2. 危険源の同定
どんな危険源が潜んでいるか、1で決定した範囲において、危険源を同定し、明らかにします。
同定とは、ある対象についてそのものに関わる既存の分野から、帰属先を探す行為のことを言います。
ISO12100では危険源リストが記載されており、当該箇所についてその危険があるかどうかをその危険源リストと照らし合わせながら探していきますので、「特定」や「抽出」ではなく、「同定」と呼んでいます。
3. リスクの見積もり
リスクを見積もるためには、まず危害のひどさと発生確率、リスクの優先度などのリスク評価要素と評価基準を決定し、それぞれの危険源に対して、リスクを見積もります。
リスク評価要素
- 略号
- 概念
- 定義
- 判定要素
- S
- 危害の程度
- その危険源で予想される危害の大きさ
- 致命傷/重傷/軽傷/微傷
- 定義が可能だが判定は主観差が生じ易い
- P
- 危害の発生確率
- 身体的傷害または健康傷害の発生する可能性
- P1
- 危険事象の発生確率
- 危害を起こし得る事象の発生する可能性
- 確実に起きる/可能性が高い/可能性がある/ほとんど無い
- 定義が可能だが判定は主観差が生じ易い
- F
- 暴露の頻度
- 危険源に アクセスする頻度
- 頻繁/時々/たまにある/ほとんど無い
- 定義が可能だが判定は主観差が生じ易い
- T
- 暴露時間
- 危険源に アクセスしている時間
- 多い/やや多い/少ない/ほとんど無い
- 定義が可能だが判定は主観差が生じ易い
- Q
- 危害の回避の可能性
- 危害を 回避できる可能性
- 不可/困難/可能/容易
- 定義が可能だが判定が難しいケースがある
代表的な4つのリスク評価手法
- 種類
- 内容
- 加算法
- リスク要素ごとに配点基準を設けておき、各点数を加算し、 合計点をリスク評価点としてリスクレベルを決定する方法。
- 積算法
- 加算法の変形。
リスク要素ごとに配点基準を設けておき、各点数を積算し、 算出したリスク評価点にてリスクレベルを決定する方法。 - マトリクス法
- 「危害の程度」と「危害の発生確率」に関わる要素を縦横2軸のマトリクスで構成し、各要素の交わるセルにリスク評価点を割り付けておき、リスクレベルを決定する方法
- リスクグラフ法
- 各リスク要素ごとに評価の分岐路を定め、最終的にリスクレベルを導く方法
一般的に上記の4つのリスク評価手法が使用されています。どの手法を使うかという決まりはなく、リスクアセスメント実施者にとって使いやすい手法を選択して使用します。
4. リスクの評価
リスクを見積もった結果、見積リスクの大きさの受け入れ可否を判断し、受け入れ可能であればリスクアセスメントは終了します。
もし、受け入れできないリスクであれば「リスク低減」を続けて実施します。この時、受入れ可能なリスクを決めておかなければ評価できないため、リスクアセスメントを実施する企業の安全に対する考え方に基づいて「受け入れ可能なリスク」を決定しておく必要があります。
5. リスクの低減
受入れ不可能と評価されたリスクに対してリスクが受け入れ可能になるように対策を講じます。